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備えあれば憂いなし、将来に備えて元気なうちに、「任意後見人」を選んでおくと安心です。

 

 人は誰でも、年を重ねるにつれて、次第に物事を判断する能力が衰えていくことは避けられません。ときには認知症といわれるような状態となって、自分の持っている不動産の管理や預貯金の出し入れなど、日常生活に欠かせない重要な営みができなくなる場合もあります。


 そのようなときに、「任意後見制度」を活用して、身上に関することを自分に代わってやってくれる人(よく知っている人、自分が信頼している人)を、判断能力があるうちに「任意後見人」としてを選んでおくと安心です。

 また、任意後見人が選任されると、それを監督するための「任意後見監督人」が選任される仕組みになっているので、適切な管理がされることになります。

 

 先日、こんなご相談をいただきました。

 

 ご高齢のAさんから、「将来、私の判断能力が不十分になってしまったら、幼いころから可愛がってきた義理の甥っ子B(亡くなったご主人の妹の子)に、後見人として様々なことを託したい。」とのご相談でした。

 Aさんは配偶者に先立たれており、お子さん・お孫さんはいません。Bさんは、一人暮らしのAさんを気遣い、週に1度は様子を見に来て、訪問看護などの手配や役所への手続きなど、思うように外出できないAさんに代わって対応してくれているとのこと。何より、AさんとBさんには、親子のような信頼関係があって、お互いに対する思いやりが溢れていました。

 そこで私は、任意後見制度を活用し、お二方の間で公正証書による「任意後見契約」を締結すること、その先の心配もされていたことから、「死後事務委任契約」も合わせて締結することを提案させていただきました。「ぜひ、お願いします。」との二つ返事をいただき、私はお二方同席の上、AさんがBさんに託したい内容を数回に分けて詳細に伺って、契約書原案を作成。その後は、公証役場の公証人と内容を確認し、お二方へフィードバックし、さらに詰めて、最終合意に至り、契約日を決定しました。

 公証役場への出頭には、私も同行し、立ち会わせていただきました。無事手続きを終えると、お二方の安堵した様子が印象的でした。万が一に備えて、任意後見制度を活用されたのは、賢明なご判断であり、備えあれば憂いなしということを、私自身もあらためて実感しました。